随想:エッセイ

音楽が終わる前に 11
夢の続きはハッピーエンド 

 

煙草の吸殻がいくつか、紙コップがいくつか、つぶれたビールの空き缶がいくつか、白と黒の市松模様の汚い床に散らばっていた。客はまばらでガランとしていた。ひんやりしていた。Dr・WOLFの4人のステージに現れ、ギターの音が、ドラムの音が、ベースの音が、そして歌が…。ああ、これがDr・WOLFの最後の夜(ライブ)…。

 

崩れそうなボロボロのコンクリート ビルディング
入口はないぜ
まばたきする蛍光灯に照らされる 2階のフロアさ
いちばん奥の扉を開く

 

「Dear SILVER WOLF」で聞いた最後の夜の扉が閉じられてしまうまで、目を、耳を、心を凝らして、Dr・WOLFを最後の夜に封じ込め、月のない夜のための光(シルバー)にするの。

 

SILVER WOLFが現れる三日月の綺麗な晩に
君の知らない路地裏から


SILVERのMiniに乗って:


そこは月の光が銀色に輝く静寂(しずか)な夜。黄金(ゴールド)の朝がけっして訪れてこない夜。あの夜、無数の粒子となって宇宙に漂い出ていった音楽を呼び戻したければウォークマンのスイッチをオンにすればいい。そして「Dear SILVER WOLF」が聴こえてくれば、白と黒の市松模様の床が、ガランとした静けさが、リーゼントをきめた
Dr・WOLFの4人が、幻視(み)えてくる。


HEY! SILVER WOLF…
夢の続きを見させてくれよ
Happy Endのヤツを
今度君に会うことができたら
たくさん話したいことがあるんだ
そして2人で素敵なメロディーを…
SILVER WOLFが現れる銀色の車に乗って
いつものあの歌をこだまさせて
オレは歌うよ誰のためでもなく
オレは歌うよこの気持ちのまま
Dear SILVER WOLF…


(word by MASAYUKI YAMADA)

 

テープにはいつも終りがきてしまうけれど、あの最後の夜に、月の見えない街に溶けていった4人のすてきな優しい笑顔のさよならが、いつも涙のレンズを透(とお)して幻視(み)えるから、終りはいつもHappy Endなの。

 

(ミッドナイト・プレス 16号)